悔しくて嫉妬するほど褒めちぎる

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あるnoteのマガジンを購入した。

ほぼゼロ推移くらい滅多としてネット上で「課金類」なぞ、まずしない私が。
本を買うにも、とりあえず図書館で当たって試し読みをしてから買うか買わないかを最終決定をするような私が。
各スーパーの定番価格を網羅し、店舗ごとで買い分けすることを惜しまない私が。
その上で、イオンのお客様感謝デーの5%引をここぞとばかりに活用する私が。


そんな私が購入したのは、岸田奈美氏のnote「キナリ★マガジン」である。

ネットの海をそれなりに徘徊して眺めている中で、とりわけ目を引き読ませる力が抜きん出ている彼女が放つ文章はとにかく人の心を引きこんで離さないのだ。
普段はマガジン購入勢ではないので、はてなブックマークのトレンドに上がっては覗きに行くという、私はその程度の読者だ。

 

これから絶対面白くなるという所で有料ゾーンになる。
そりゃあそうである。彼女はそれを生業としているのだから。
期間限定で有料ゾーンを解放して下さることもあり、タイミングがあれば拝読をするという極めていい加減な読者がこの私だ。

 

ただ今回は違う。1度での課金でもこの度完結した「姉のはなむけ日記」の同人誌が届くのだという。
私はまんまと乗っかる形で、この度、満を持して購入したのである。

 

今まで口惜しい思いをしながら締めていた有料ゾーンが(過去のものも)全て拝読できるのだ。
太っ腹にも程がある。

そういうわけで、他の既存記事を横目に「姉のはなむけ日記」だけをとりあえず読んだ。全て。トータル4〜5時間程度かかった。


月並みな表現で安直が過ぎるのだが、やっぱり彼女はすごい。
これだけの膨大な文字数を時間を惜しまず(寝るのを惜しむ程)、読み進めようとする文章が発する力量がハンパないのだ。

 

読み終えた後の爽快感は筆舌に尽くし難い。
考えさせ、笑わせ、ほろっとさせる。正に人情喜劇さながら。
色々な人を巻き込みながら大団円に収まっていく様は、テレビドラマ「王様のレストラン」を想起させる程だ。

無料公開されているダイジェスト版もよいが、だまされたと思ってマガジン購読してみてほしい。*1
作者本人から何か頼まれたわけでも何でもない。本当に良いと思うので、全力でお勧めする。

 

 


ただ。
読めば読む程悔やしさが滲む。
それは彼女に対してでは勿論なく、自分自身に対してである。

 

自分の家のことをあけすけに語れることも。
人の心をつかんでいることも。
文章で生計を立てていることも。

彼女は私が20代にやりたいと思ったことを全てやっている。

 

これまで様々なネット上の炎上劇を見すぎてしまったことが一番の理由として挙げることもできる。しかし、それ以上にアラサーからつい数年前までは「現実」を乗りこなすことで精一杯であった。
同人活動と古の「エキサイト携帯ホームページ」で「人生はネタだ」的感覚で自分のことをあんなにあけすけに書いていた20代の私は、アラサーになるとすっかり書けなくなってしまったのである。
そうしてアラフィフに片足を突っ込んで、ようやく改めて自分のことを語ろうと思えるようになったのだ。

それなのに一回り以上も違う、彼女がそれをやってのけている。

 

ありとあらゆるこ辛く悲しく苦しい出来事を、まごうことなく喜劇化してしまう。
己が流した血と汗と涙を、己の手によって新たにグレードアップした血肉へと変えてしまうのだ。
中々出来ることではない。
だからこそ彼女の紡ぐ言葉に魅了されてしまうのだろう。

 

私もその昔から自分の経験を血肉に変えようとしてきたが、上手くいくことはなかった。仮に上手くいったとしても、せいぜい食する人を選びまくる「癖強めのレバニラ炒め」程度でしかなかった。
そういう例えでいうならば、彼女は自分の経験を「A5ランクの神戸牛ステーキ」に変換することができるのである。

それが彼女の持つ力量なのだ。

 

悔しすぎて手放しで褒めちぎりたくはないが、もう褒めちぎるしかない。

それが彼女だから。

それが才能だから。

 

只々、「お見事!」なのだ。

 

 

 

でも、やっぱり悔しいから、足元に及ぼすとも、私はここでしばらく書き続けようと思う。

「悔しいマン」で「何者にもなれなかった」私の最後の悪あがきだ。

 

 

note.kishidanami.com

 

*1:尚、9月15日までにnote内「キナリ★マガジンを購入いただくと、私を魅了した「姉のはなむけ日記」同人誌が届くそう。以前より6日程延長されてますので、興味を持たれた方は是非ご購入下さい!