「青春映画」というカテゴリにそんなに思い入れがなく、主演も元乃木坂メンバーということもあり、シネコンでよく見るタイプの映画だと思っていた。
見るまでは。
以下から壮大なネタバレが続きますので、
ネタバレしてかまわないという方だけ、ご覧ください。
「青春映画」という衣を着た、実は「未来の映画世界に対する危機感」を遺憾なく詰め込んだ意欲作。
「未来では映画はない。動画は5秒以内。」
劇中、主人公ハダシが作る映画の主人公として抜擢された倫太郎に告げられる。
(倫太郎は未来から来たタイムトラベラーという設定)
ハダシはこの未来の事実に打ちのめされるが、見ていた私もまた衝撃を受けた。
それまで「まあ、良くありそうな青春ものだろう」と高を括って見ていたが、その意識を見事にひっくり返された。
未来に残らない映画をどう撮るか。ストーリーを追うより、その裏テーマ的な要素を探り取ろうと思って最後まで追って見たというのが本当のところだ。
過去の映画は4時間・3時間は当たり前だった。
しかし、今は2時間でも長いと思う人も多いだろう。
ここ最近話題になった「ファスト映画」はその最たるものだと思っている。
若い人には20分程度の動画でも長く感じ、10分以内の動画か1分程度でサクッと見ることのできる動画が人気だと聞く。
その傾向はYouTubeからTikTokという動画カテゴリの変化でも感じ取れるところだ。
私はこの映画の中で言及された『「5秒以内の動画」がスタンダードになった未来の話』がまさかの話ではなく、あながちそうなってしまうのではないかという危機感を覚えたのだ。
スマホの影響?映画に集中できない人続出「スマホOK映画館」待望論も|NEWSポストセブン
偶然にも、こうした記事を見つけた。
この記事は映画館マナーの話ではあるが、この映画が扱ったテーマにとても近しいものを感じる。
そういう私も映画を見慣れていない頃は「2時間も座って見てられるか」と思っていたクチだ。
ただ、ちゃんと映画の本数をこなすうちに、この2時間で自分自身が知りえない「貴重な追体験」ができる時間なのだと気が付いてからは、映画の時間の長さとやらは気にならなくなり、「映画館」という空間で味わう没入感に浸るほどになっていた。
そう、その追体験こそが、ハダシが語る「映画は過去と未来を繋ぐ」ということではないのか。
そうでないと、過去の名作が「名作」として語り継がれることなどないからだ。
彼女が映画内で熱く語るそのシーンは嘘ではなく、この映画が一番伝えたいことだと思っている。
映画本編自体は、未来の映画の在り方に打ちのめされつつも、悩みもがきながら映画を完成させて…という、割と丸く収まるキレの良い終わり方だったと思う。
ラブコメがすべてだと思っていても、時代劇以外はつまらないと思っていても、「映画」そのものに掛ける「思い」は何物にも代え難く、素晴らしいものであるということを遺憾なく詰め込まれている。
とても、とても熱い映画に対する気持ちがこもった一石を投じる作品。
一見の価値は有り余るほど。映画を愛する人はきっと刺さると思う。